七宝焼きの販売店が教える並河靖之の花瓶・日本の伝統美術工芸
並河靖之の七宝焼きは、独自の研究とセンスが具現化された、繊細な美しさが特徴です。これまでに国内外の博覧会に出品した作品は、多数の賞を受賞し海外でも高い評価を得ています。
並河の作品はペットボトルよりも小さいサイズのものが多く、この小さな面積に日本の四季や風景を色彩豊かに細かく表現できるのは、並河の技巧ならではでしょう。
こちらでは、並河靖之の代表作の一つである「菊紋付蝶松唐草模様花瓶」と日本の伝統美術工芸の盛んな明治時代ついてご紹介いたします。販売店で七宝焼きを購入する前に、参考にしてみてください。
並河靖之の代表作「菊紋付蝶松唐草模様花瓶」
並河靖之の代表作の一つである、菊紋付蝶松唐草模様花瓶は、高さが約20㎝の小さい七宝焼きです。この小さな花瓶の背景には並河が独自の研究で開発した黒色透明釉薬が使われており、透明感のある黒地に色鮮やかな蝶と花があしらわれています。
並河は有線七宝という植線を利用した技法を追求していましたが、蝶の細部をよく見ると、羽の緑色・青色・赤色のそれぞれの部分にも細い輪郭線を入れており、その間隔は0.5㎜以下です。帝室技芸員である並河の技巧が、現代でも再現ができないと言われている理由は作品を見るとわかります。
菊紋付蝶松唐草模様花瓶は、並河が開発したさまざまな色の釉薬を使用しているため、光の当たり方で色合いが変わります。黒色透明釉薬を使用した黒色の背景が生み出す奥行きが、蝶や花の色彩豊かな色合いを引き締めています。
菊紋付蝶松唐草模様花瓶は京都の泉湧寺に所蔵されていますが、以前開催した展覧会がきっかけで並河靖之の作品であると判明しました。
並河が繊細にグラデーションを用いて描いた、蝶の羽の模様や草花の細かさ、藤の花など、華やかに際立たせる花鳥風月の色鮮やかさは、ぜひ販売店や展覧会で直接確かめたい美しさです。
七宝焼きの販売店・銀座 真生堂では、並河靖之の技巧が随所にあらわれた作品を多数取り扱っています。並河にしか表現できない日本の七宝焼きの魅力を肉眼で確かめてみてください。
日本の伝統美術工芸が盛んな明治時代
明治時代は、日本の優れた技巧による美術品が世界に注目された時代でもありました。日本政府は西洋からの遅れを取り戻すために、海外の産業を積極的に取り入れ、外貨獲得手段の一つとして日本の伝統美術工芸品を輸出することを推奨していました。
その中で並河靖之は挫折を繰り返しながら、色の表現にこだわります。並河作品の特徴である立体的なグラデーションは、少しずつ釉薬を塗り、回数を重ねて焼くことで色を出しています。
一か所の色を表現するのに、明度の異なる釉薬を15種類以上使用したという記録も残っています。並河の美しさを追求する姿勢は作品に反映され、国内外の博覧会では31回も賞を獲得しています。
時代背景や一つの作品を完成させるのに半年から一年を要したことから、並河の七宝焼きは海外に渡った作品が多く、日本に残っているのはわずかでした。近年、明治時代初期の伝統美術工芸品の優れた価値を再認識する機会があり、この時代の日本の伝統美術工芸品を海外から買い戻す動きも出ています。
以前よりもまとまった数の作品を目にする機会が増えたことで、明治時代の七宝焼きに興味を持った方も多いのではないでしょうか。
貴重な七宝焼き作品を販売している銀座 真生堂では、並河靖之の作品をはじめ、明治時代の名工の作品を取り揃えています。販売価格や作品の詳細に関することは、お問い合わせフォームよりご連絡ください。