七宝(七宝焼)

七宝(七宝焼)の技法を徹底解説!歴史から基本的な技法まで紹介

EndoAtsushi

七宝(七宝焼)は、日本を代表する伝統工芸品のひとつであり、その美しさや歴史的背景から、多くの人々に愛されています。

しかし、その製法や技術については、あまり知られていない方も多いのではないでしょうか本記事では、七宝の歴史や製法、作品の種類や日本文化との関連性について、詳しく解説します。

「七宝の歴史や起源について知りたい…」
「七宝に用いられる材料や道具について詳しく知りたい…」
「七宝の基本的な技法や図案の描き方、色のつけ方について知りたい…」
「七宝の火入れや修復技術、仕上げの方法などの技術について教えてほしい…」
「七宝の代表的な作品の種類や特徴、日本文化との関連性について知りたい…」

などの疑問について本記事で解説させていただきます。
本記事を読むと
・七宝について、詳しい知識を得ることができる。
・七宝の製法や技術について理解することで、より深い鑑賞が可能になる。
・七宝の代表的な作品や日本文化との関連性を知ることで、日本文化への理解が深まる。
・七宝を作る際に必要な知識や技術を学ぶことができ、自分自身で七宝を作ってみたいという方にも

役立つ情報が得られますので、ぜひ参考にしてください。

それでは、参ります。

七宝(七宝焼)の始まり

現代で超絶技巧と評される七宝は、江戸時代後期に梶常吉(かじつねきち)によって生み出されました。

名古屋の骨董品店で店主からオランダ渡りの七宝の皿を譲り受け、そのお皿を割り、どのように制作されているのかを研究したといわれております。その後、梶常吉は五寸ほどの七宝の鉢を完成させます。

七宝(七宝焼)が発展した背景

七宝は、明治時代に政府の指示により外貨を稼ぐ為に制作されました。

良い作品でなければ売れない為、技術を高め、時間をかけて丁寧に作り上げました。その成果もあり、当時の七宝作家は国内外の博覧会などで数多くの賞を受賞しました。

七宝(七宝焼)の起源

七宝の起源については、諸説ありますが、最も一般的には、紀元前4世紀頃に中国で発明されたとされています。

七宝とは、金属やガラスなどの美しい色彩を持つ7つの宝物を指し、これを用いて作られる焼き物が七宝と呼ばれるようになりました。

七宝(七宝焼)の材料と道具

七宝には、主に金属(銅、銀、金など)やガラス質の釉薬が用いられます。金属は、柔軟性があり、変形しやすいという特徴があります。

七宝(七宝焼)に必要な道具とその用途

七宝に必要な道具としては、七宝磁器・陶磁器・ガラス器などに模様を描くための筆、模様を描くための紙、描いた模様を切り抜くためのハサミ、模様を形成するためのペンチ、金属を形成するための鍛冶道具、金属を削るためのやすり、窯で焼くための窯などがあります。

これらの道具を適切に使用することで、七宝作品を完成させることができます。

七宝(七宝焼)の基本的な技法

有線七宝

有線七宝とは、銅や銀などの素地に下絵を描き、下絵にしたがって帯状の金属線で色の境目を作り、その中に釉薬をのせ、焼成し、研磨した近代七宝の基本となる技法です。

無線七宝

無線七宝は、有線七宝と同じく植線により模様を描き釉薬をのせるが、その後焼成する前に金属線を取り除き、研磨した技法です。明治13年(1880)濤川惣助によって考案されたと伝えられています。無線七宝によって美しいグラデーションやぼかしができるようになりました。

盛上七宝

盛上七宝とは、研磨の途中で、盛上げようとする部分にのみ釉薬を使い、盛り上げて焼成し、完成させるものです。より立体感を生むために作られた技法です。

省胎七宝

省胎七宝は、主銅の素地に銀線で植線し、透明釉を施し焼成・研磨で仕上げた後、銅の素地を酸で腐食させて取り除き、表面の銀線と釉薬だけを残したものです。
銀線と釉薬の透過効果をねらったもので、完成品はガラス製品のように透き通ります。
しかし、銀線と釉薬だけでできているため、他の七宝に比べて壊れやすいのが欠点です。
明治30年(1897)頃、川出柴太郎によって考案されたといわれています。

透胎七宝

胎の一部を切り透かしにして透明釉を施す、あるいは、銅胎の一部を切り透かしにして透明釉を施し、他の銅素地の部分には通常の七宝を施す技法のことです。

陶胎七宝

陶胎七宝とは、陶器の素地に七宝を施したものです。

磁胎七宝

磁胎七宝とは、磁器の素地に七宝を施したものです。

銀胎七宝

銀張七宝は、銅の素地の表面に銀箔を張り、その上に透明や半透明の釉薬を盛りつけて焼成する技法です。銅の素地を使って、銀の素地を用いた時と同じような効果をねらって考え出されたものです。明治27年(1894)に塚本甚平により考案されたもので、明治35年(1902)頃盛んに作られました。

七宝(七宝焼)の図案の描き方

七宝の図案を描く際には、まず紙に模様を描きます。その後、模様を金属素地に写します。

図案を描く際の注意点やコツ

図案を描く際には、まず紙に模様を描く際に、線の太さや形状に注意が必要です。描いた線を七宝の金属線(植線)で表現できるのかなど図案の時点で考える必要があります。

七宝(七宝焼)の色のつけ方

七宝(七宝焼)で用いられる色の種類と特徴

七宝で用いられる色には、青、緑、黄、赤、白、黒などがあります。

これらの色は、金属に含まれる金、銀、銅などの微量元素を利用したものや、化学的に調整された酸化物、酸化物の混合物で表現されます。それぞれの色には、深みや輝きの違いがあり、様々な表現が可能です。

七宝(七宝焼)の色のつけ方の具体的な手順と注意点

七宝の色をつける際には、粉末状になっている色素を水と混ぜてペースト状にします。

このペーストを筆で模様や図案に塗り、窯で焼成します。

注意点としては、色の濃さや薄さを調節するため、水とのバランスを適切に保つことが重要であり、また、ペーストが乾燥する前に焼成することが望ましいです。また、色の塗り方によっては、綺麗な色が出ず、不均一な色合いになることがあるため、均等に塗ることが大切です。

七宝(七宝焼)の焼成方法

七宝の焼成は、約800〜850度で10〜15分ほど焼きます。

かつては木炭窯を使っていましたが現在では電気炉を使うのが一般的です。釉薬は水分を含んでいるため、焼くと体積が目減りしてしまいます。釉薬差しと焼成を何度も繰り返します。

焼成の注意点

焼成には、主にガス窯や電気窯を使用します。

窯には、金属やガラスを入れたまま加熱するための構造があり、温度は数百度から千数百度にまで上昇します。

注意点としては、加熱時間や温度によって色が変化するため、適切な温度と時間を把握することが重要であり、また、窯の状態や気象条件などにも影響を受けるため、窯の状態や周囲の環境を適切に管理することも必要です。

仕上げについては、焼成後に細かく削り出して、表面を平滑化し、艶を出すことが一般的です。

七宝(七宝焼)の修復技術

七宝の修復技術とは、壊れた七宝作品を修復する技術のことを指します。

壊れた作品は、金属やガラスの性質上、修復が困難な場合がありますが、適切な技術を用いることで、壊れた作品を修復することができます。

修復に必要な材料や道具

修復に必要な材料には、主に接着剤や研磨剤があります。

接着剤には、シアノアクリレートやエポキシ樹脂などが使用され、研磨剤には、ダイヤモンドペーストなどが使用されます。修復に必要な道具には、主に接着剤を塗る筆や、修復部分を削る研磨剤などがあります。

作品の見どころや魅力的なポイント

七宝の作品は、それぞれに独自のデザインがあり、美しく丁寧に作られています。

また、繊細な模様や色使いが特徴的で、見る人の心を魅了します。七宝作品には、年代や地域によって特徴が異なり、その歴史的背景や文化的背景から見ることができる見どころもあります。

七宝(七宝焼)と日本文化

七宝は、日本文化において重要な役割を果たしています。七宝が発展する以前は、漆や金箔、織物などの技術が主流でしたが、七宝が発展したことで、金属やガラスを用いた新しい技術が生まれました。また、七宝作品は、美術品として高く評価され、日本文化の美意識を形成する重要な要素となっています。

日本文化との関連性

七宝は、日本文化の美意識や価値観と深い関わりを持っています。七宝は、美しさや繊細さ、職人技や手仕事の価値を重視する日本文化の一面を反映しています。また、七宝の作品には、日本古来の文化や風習、自然などがモチーフとして取り入れられており、日本文化との深い関連性があります。

七宝(七宝焼)と日本文化の関係性

七宝と日本文化の関係性から見えてくるものとしては、職人技や手仕事、伝統技術の継承などが挙げられます。七宝は、一つの作品を作るために数多くの工程が必要であり、職人の技術や手仕事が不可欠です。また、伝統技術の継承にも力を入れており、若手職人の育成や技術の継承が行われています。これらの取り組みは、日本文化の伝承や継承にもつながり、日本文化の魅力や価値を伝えることにも繋がっています。

まとめ

七宝(七宝焼)は、金属やガラスを用いた技術で、日本文化に深く根付いた伝統的な工芸品です。七宝の歴史や材料、技法、作品の種類や特徴、修復技術などについて、初心者にもわかりやすく解説しました。

また、七宝が日本文化に与えた影響や日本文化との関連性から見えてくるものについても紹介しました。

七宝は、美しさや職人技、伝統的な技術の継承など、多くの魅力があり、今後もその価値が広く認められ続けることでしょう。

七宝は、単に美術品や装飾品としてだけでなく、日用品としても使われることがあります。例えば、花瓶や茶碗、香炉などは、日常的に使われる品です。そうした七宝製品を身近に使うことで、日本文化の美意識や精神を身近に感じることができます。

また、七宝の技法や美学は、現代のアートやデザインにも影響を与えています。
金属やガラスを用いたアートや工芸品は、七宝の技法や美学を取り入れた作品が多くあります。七宝が現代のアートやデザインに与えた影響は大きく、その価値はますます高まっています。

七宝は、日本の伝統工芸品の一つとして、その美しさや繊細さ、職人技や手仕事の価値を反映しています。また、七宝の歴史や作品には、日本文化や伝統が反映されており、その魅力にはたくさんの人々が魅了されています。七宝の技法や美学は、今後も現代のアートやデザインに影響を与えることでしょう。

執筆者
銀座真生堂
銀座真生堂
メディア編集部
七宝焼・浮世絵をメインに古美術品から現代アートまで取り扱っております。 どんな作品でも取り扱うのではなく私の目で厳選した美しく、質の高い美術品のみを展示販売しております。 このメディアで、美術品の深みや知識を発信していきます。
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