七宝(七宝焼)

林小伝治とは? 明治の七宝作家として活躍

info@x-knock.com

この記事は、明治時代の七宝作家、林小伝治に関する内容を記載しております。
国内外で現在も人気の作家の一人で、尾張七宝作家の中でもトップレベルの技術の高さでございます。

林小伝治

林小伝治

林小伝治は天保2(1831)年に海東郡遠島村(現七宝町)に生まれました。文久元(1861)年に林庄五郎から七宝技法を教わり、七宝制作に取り組んだといわれております。東京の濤川惣助、京都の並河靖之に続き、緑綬褒章を受章するなど明治期の尾張七宝を代表する作家として知られております。

初めて外国人に七宝焼を売った人物

林小伝治は外国人に初めて七宝を売った人物と伝えられております。その時のエピソードがございます。

江戸末期、金銀銅の輸出が禁止されておりました。しかし小伝治は外国人に七宝焼を販売しようと思い立ちます。素地が銅で出来ている七宝を外国人に販売すると法律違反になってしまいます。それでも将来七宝焼の販路を拡大する為には外国人に対しても販売しなくてはならないと考えた小伝治は行商に出発します。七宝焼を蚕の種紙を詰め込んだ篭の中にしのばせ、それを天秤棒で担ぎ、尾張の養蚕商と名乗り、関所を通過しました。目的地は横浜の外国人位留地でした。当時開港直後の横浜には多くの軍艦が停泊中でした。小伝治は小舟を入手し、夜になるのを待って軍艦に近づきました。軍艦に乗ることができた小伝治は持っていた七宝焼を売ることに成功しました。七寸の茶壷と八寸の花瓶が売れたと伝えられております。

多数の展覧会で賞を受賞

小伝治は国内外での展覧会で多数の受賞歴がございます。

【海外】

明治18(1885)年 ニュールンベルク金工万博にて【銀牌】

明治22(1889)年 パリ万博にて【銀賞】

明治26(1893)年 シカゴ・コロンブス博覧会にて【有功銅牌】

明治33(1900)年 パリ万博にて【銀賞】

明治37(1904)年 セントルイス万博にて【金賞】

明治38(1905)年 リエージュ万博にて【名誉賞】

明治43(1910)年 日英博覧会にて【金賞】

【国内】

明治14(1881)年 第二回内国勧業博覧会にて【褒状】

明治23(1890)年 第三回内国勧業博覧会にて【褒状】

明治24(1891)年 美術展覧会にて【褒状二等】

明治25(1892)年 美術展覧会にて【褒状二等】

明治26(1893)年 美術展覧会にて【褒状三等】

明治27(1894)年 奈良博覧会にて【賞状】

明治28(1895)年 第四回内国勧業博覧会にて【有功二等】

明治29(1896)年 五二会全国品評会にて【有功賞銀牌】

明治29(1896)年 第二回愛知県五二会品評会にて【銀牌】

明治30(1897)年 第三回愛知県五二会品評会にて【銅牌】

明治31(1898)年 新古美術品展覧会にて【三等賞銅牌】

明治31(1898)年 第二回五二会全国品評会にて【有功賞銅牌】

明治31(1898)年 第十三回競技会にて【銅賞牌】

明治32(1899)年 新古美術品展覧会にて【三等賞銅牌】

明治32(1899)年 全国意匠工藝博覧会にて【三等賞銅牌】

明治32(1899)年 第二回五県総合五二会品評会にて【有功銅牌】

明治32(1899)年 第十四回競技会にて【一等褒状】

明治33(1900)年 第四回愛知県五二会品評会にて【銀牌】

明治33(1900)年 新古美術品展覧会にて【三等賞銅牌】

明治33(1900)年 全国貿易品博覧会にて【有功二等賞銀牌】

明治33(1900)年 美術展覧会にて【三等賞銅牌】

明治33(1900)年 第十五回競技会にて【銅賞牌】

明治34(1901)年 第七回新古美術品展覧会にて【二等銀牌】

明治34(1901)年 第七回新古美術品展覧会にて【二等銀牌】

明治34(1901)年 全国製産品博覧会にて【有功一等賞金牌】

明治34(1901)年 美術展覧会にて【褒状一等】

明治34(1901)年 第一回全国窯業品共進会にて【二等賞銀牌・褒賞】

明治34(1901)年 内国生産品共進会にて【有功金牌】

明治34(1901)年 五二会臨時品評会にて【二等賞銀牌】

明治35(1902)年 第二回全国製産品博覧会にて【有功二等賞銀牌】

明治36(1903)年 名古屋物産展覧会にて【銀牌】

明治36(1903)年 第五回内国勧業博覧会にて【二等賞牌】

七宝作家の中でもトップレベルの技術

当時尾張には多数の七宝作家がいましたが林小伝治はその中でもトップレベルの技術を持っておりました。赤透技法や無線技法を使った作品も残されておりますが、殆どの作品は紺色の素地に花鳥図が描かれた作品でございます。紺色に花鳥図は明治期の七宝ではよくある図柄ですが林小伝治の場合はその花鳥図を表現する技術力が他とは全然違います。金線や銀線を使い、緻密に表現された図柄はまるで生きているようです。

銀座真生堂は林小伝治の作品を取り扱っております

銀座真生堂では林小伝治の作品も取り扱っております。明治期七宝の王道の図柄でもある花鳥図にこだわり続け、制作された作品は国内外で称賛されました。現代では再現不可能な超絶技巧品ばかりでございます。その技術の高さに当店の店主も見惚れて、一点の作品を数時間眺め続けたというエピソードもございます。そのトップレベルの技術を誇る林小伝治の作品の中でも更に厳選し、良い作品のみを当店では取り扱っております。

執筆者
銀座真生堂
銀座真生堂
メディア編集部
七宝焼・浮世絵をメインに古美術品から現代アートまで取り扱っております。 どんな作品でも取り扱うのではなく私の目で厳選した美しく、質の高い美術品のみを展示販売しております。 このメディアで、美術品の深みや知識を発信していきます。
記事URLをコピーしました