全国の漆器の種類10選!種類ごとの違いや漆器の魅力を解説

漆器には様々な種類があり、伝統工芸品に認定されているものだけでも23種類存在します。伝統工芸品に認定されていないものも含めると、漆器の種類は実に30を超えるのだそうです。
このようにとても豊富な種類の漆器ですが、漆器の種類によって仕上がりや見た目、印象が全く異なります。そこが漆器の魅力であり、面白さです。
- 漆器にはどんな種類があり、どんな違いがあるのか
- 漆にはどんな種類があり、それぞれどんな良さがあるのか
この記事を読むことで、上記のようなことを知ることができます。すべての漆器の中から特に有名な種類を紹介するので、漆器に興味があるけれど何から知れば良いか分からない方も要チェックです。
全国の漆器の種類10選
ここからは、全国の漆器の種類について解説していきます。漆器の種類は幅広いですが、今回は特に有名とされる10種類の漆器をご紹介します。
- 輪島塗
- 金沢漆器
- 山中漆器
- 会津塗
- 紀州漆器
- 越前漆器
- 鎌倉彫
- 小田原漆器
- 高岡漆器
- 木曽漆器
それぞれについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
輪島塗
1つ目は輪島塗です。石川県輪島市が産地である輪島塗は、輪島にしかない「輪島地の粉」を使って作られています。
地の粉は、簡単にいうと珪藻土を焼き、蒸して粉状にしたものです。珪藻土が良質な土であればあるほど、漆器の耐久性を高めることができます。
輪島を含む能登は珪藻土屈指の良質な産地でもあるので、その地の粉を使って作られた輪島塗は耐久性がとても高いのです。使用している漆も天然漆に限られ、100以上の漆塗の工程を重ねており、品質も良いといわれています。
金沢漆器
2つ目は金沢漆器です。金沢漆器も石川県が産地で、一番の特徴は漆器に蒔絵が施されており、美しく華やかな見た目をしていることだといわれています。
蒔絵とは、金の粉「蒔絵紛」を使って装飾する技法のことです。漆を塗ったり、漆で絵を描いた器の上に蒔絵紛をまきます。
また、金沢漆器は加賀藩に守られながら蒔絵の文化を発展させ、伝承されていきました。このように発展した蒔絵は、加賀蒔絵ともいわれています。
金沢漆器はきらびやかな見た目から調度品や茶道具として使われることが多く、海外でも人気を博している漆器の一つです。
山中漆器
3つ目は、山中漆器です。山中漆器も輪島塗や金沢漆器と同様に石川県が産地であり、その中でも山中温泉地区で製造された漆器を指します。
山中漆器は、木目を生かした見た目が特徴です。木地師が木地を整え、そこに漆を塗ることで完成するのですが、木目が見えるその見た目から木のあたたかみを感じやすい漆器です。
また、山中漆器は、味噌汁のお椀として使われているのを多い傾向にあります。このことから、山中漆器は日本人の生活に特に馴染んでいる漆器の一つともいえるでしょう。
会津塗
4つ目は、会津塗です。会津塗の産地は福岡県会津地方で、一番の特徴は縁起物を組み合わせた装飾が施されていることです。
縁起物には、例えば松竹梅や破魔矢などがあります。塗り方は、花塗りと金虫喰塗りの二種類です。
花塗りは、乾性油と漆を混ぜた「有油漆」を漆に塗るという技法になります。ムラなく塗ることで光沢が出て、見た目に磨きがかかるのです。
金虫喰塗りは、黒い漆の上から籾殻をまき、漆が乾いたら籾殻を取り除きます。籾殻を取り除くことでところどころにへこみができ、それが唯一無二の柄となるのです。
紀州漆器
5つ目は、紀州漆器です。紀州漆器の産地は和歌山県海南市の黒江地区で、黒江塗りともいわれます。紀州漆器はシンプルさが最大の特徴です。
漆器が高価なものであった時代に下地を漆から柿渋に変え、塗りの回数を減らしたことで、低価格な漆器が実現しました。これによって庶民でも日常的に漆器が使えるようになり、ますます多くの人に漆器が広まっていったのです。
また、紀州漆器には根来塗といった黒漆の上に朱漆を塗る塗り方や、蒔絵が描かれたものなど様々な見た目の漆器が登場しています。
越前漆器
6つ目は、越前漆器です。越前漆器の産地は福井県鯖江市で、上品な見た目をした漆器なので日常使いだけでなく結婚式など縁起の良い日にも使われます。
発展するにつれて「蒔絵」や、金箔を漆に沈める「沈金」などの装飾も加えられました。越前漆器は分業制で職人によって作られているため、ハイペースでの生産が可能です。
また、紀州漆器同様、本漆を使うのではなく合成樹脂などを漆と混ぜて「本漆風」の漆器も作られています。大量生産ができ、安価であることから外食業界の約8割の食器が越前漆器だともいわれているのです。
鎌倉彫
7つ目は、鎌倉彫です。鎌倉彫の産地は神奈川県の鎌倉市やその周辺で、起源も鎌倉時代といわれています。
鎌倉彫の最大の特徴は、カツラやイチョウの木で作った器に文様を掘る点です。文様を彫った後に漆を塗ることで鎌倉彫が完成します。
鎌倉時代には仏具として使われ、室町時代には茶道具に使われる技法として好まれました。また、昭和54年に伝統的工芸品に指定されています。
小田原漆器
8つ目は、小田原漆器です。小田原漆器の産地は神奈川県小田原市で、ろくろを使って木を削り、漆器を作り上げます。
小田原漆器の最大の特徴は、木地には主に国産の欅を使うことです。欅の木目をあえて残し、木の雰囲気をしっかりと感じられる上品な見た目をしています。
また、小田原漆器は主に「摺り漆塗り」と「木地呂漆塗り」といった木目を綺麗に残せる二種類の塗り方が主流です。さらに昭和59年に伝統的工芸品に指定されています。
高岡漆器
9つ目は、高岡漆器です。高岡漆器の産地は富山県高岡市で、最大の特徴は表現の幅がとても広いことだといわれています。
高岡漆器で用いられる技法は、「青貝塗」「勇助塗」「彫刻塗」の3種類です。「青貝塗」は真珠光といわれる光沢のある貝殻の面を使って、生き物や自然を表現します。
また「勇助塗」は石井勇助という人物が唐風を取り入れて技巧を凝らした技法で、「彫刻塗」は花鳥風月などを彫る技法です。多様な作品があるので、見るものを楽しませてくれます。
木曽漆器
最後は、木曽漆器です。木曽漆器の産地は長野県塩尻市周辺で、塩尻市は特にヒノキの生産の地として知られています。
木曽漆器は天然漆を用いて作られており、シンプルな美しさと丈夫さが特徴です。また、木曽漆器にも塗り方が豊富にあります。
生漆を何度も塗る「木曽春慶」や、タンポという道具で模様を作る「木曽堆朱」、何種類もの色漆で塗分ける「塗分呂色塗」などです。さらに、木曽漆器は普段づかいしやすい漆器としても親しまれています。
特に有名な漆器の種類|日本三大漆器
ここまで様々な種類の漆器を紹介してきましたが、この中でも特に有名な漆器のことを「日本三大漆器」といいます。日本三大漆器とは、一般的には「会津塗」「山中漆器・輪島塗」「紀州漆器」のことです。
日本四大漆器と分類されることもあり、その場合は上記の漆器の種類に越前漆器などが加わります。日本三大漆器とされる漆器の基準は、一説によると30種類以上もある漆器の種類の中でも漆器の生産量が多い漆器です。
ただし、上記の理由は一説であり、正確な基準はないとされています。そのため、日本三大漆器といえば前述の漆器があげられることが多いですが、それ以外の漆器が含まれることもあるようです。
どの漆器の種類にも優れた部分があるからこそ、「日本三大漆器」「日本四大漆器」の概念が変わることがあるのかもしれません。
漆の種類
ここまでは、漆器の塗り方や彫り方など、主に装飾や見た目に関する種類を豊富に紹介してきました。ここからは、漆自体の種類を紹介します。
現代では漆にもさまざまな種類があるため、漆器は限られた人が買える高級品ではなく、誰でも日常的に使えるものになりました。どんな漆の種類があるのかを知っていきましょう。
- 本漆
- 合成漆
- カシュー漆
- ウレタン漆
それぞれについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
本漆
本漆とは、いわゆる100%本物の漆の樹液だけが用いられた漆のことです。本漆は防菌などの効果も期待でき、塗ると乾くまでに時間がかかるため、大きな手間暇がかかってきます。
手間暇がかかるので必然的に高価な漆器になりますが、その分繊細な装飾や仕上がりの美しさが変わってくるのです。使えば使うほど味が出るのも本漆ならではといえるでしょう。
そのため、基本的に伝統工芸品と呼ばれるものにはもれなく本漆が使われています。「値段が張っても良いものを」という本物志向の人にぜひ選んでほしい漆の種類です。
合成漆
合成漆とは、名前の通り漆に合成樹脂が混ぜ合わさったものです。本漆と最も異なる部分は、使えば使うほど味が出たり、美しさが増したりすることがない点でしょう。
ただし、基本的に機械で製造されることが多いため、安価で購入できるという大きなメリットもあります。プラスチック素材が使われていることもあり、電子レンジなどでの加熱にも問題がありません。
そのため、日常づかいしたいというだけなのであれば、合成漆で作られた漆器がおすすめでしょう。
カシュー漆
カシュー漆とは、カシューナッツから採取されたものが原料となっていて、漆は全く含まれていません。ただ、漆が含まれていない塗料の中では一番漆に近い質感を出せるものとして有名です。
カシュー漆は耐久性や質感、香りにおいて漆に劣ります。しかし、合成漆のように耐熱性が高く、紫外線にも強いというメリットがあるのです。
また、漆より工程がシンプルであり、素材の質も異なるため安価で購入することが可能です。カシュー漆も日常づかいの漆器として優秀といえるでしょう。
ウレタン漆
最後はウレタン漆です。ウレタン漆とは、その名の通りウレタン樹脂を使った塗料で、カシュー漆と同様に本物の漆は一切含まれていません。
ウレタン漆は本漆よりも見た目の美しさや質の高さが劣りますが、耐久性が高く食洗器にも耐えることができます。そのためとても扱いやすく、価格も安いのです。
しかし、耐久性が高いとはいえ使い続けていると表面が曇っていってしまいます。そのため、ウレタン漆も見た目の美しさよりも日常づかいの面を重視する人へ向けた素材といえるでしょう。
漆器の種類以外にも魅力がたくさん
ここまで、漆器にも漆にも様々な種類があることと、種類ごとの魅力をお伝えしてきました。実は、漆器の魅力はこれだけではありません。
下の記事では、漆器の魅力7選と、漆器がどのように人々を魅了し、発展していったかについて解説しています。
- もっと漆器の魅力を詳しく知りたい
- 漆器にはどんな価値があるのか知りたい
このように漆器に興味がある方は、ぜひ下の記事をチェックしてみてください。

多様な種類の漆器作品を紹介
漆器には様々な種類がありますが、それに伴い漆器作品のジャンルも多岐にわたります。きらびやかで豪華な作品やシンプルで上品な作品など、同じ漆器でもまったく違う印象を持つ作品がたくさんあるのです。
- どんな漆器の作品があるのか知りたい
- 歴史的名品だけでなく、現代風の漆器作品も知りたい
このように漆器の作品に興味がある方は、ぜひ下の記事を読んでみてください。素敵な漆器作品に出会えるはずです。

銀座真生堂では明治工芸品を取り扱っております
銀座真生堂では、漆器が海外に輸出されていた時期と同じ時期に数多く輸出された明治工芸品「七宝焼」を取り扱っております。七宝焼は美しい模様や色彩が表現された、現代の技術では再現できないとされる超絶技巧品です。
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まとめ
本記事では、日本の代表的な工芸品である漆器の種類や、漆の種類とその魅力を紹介しました。漆器には今や多くの技法が存在しており、その掛け合わせで幅広い作品が生まれています。
漆器は日本だけでなく海外の大きな美術館でも展示されているので、興味のある方はぜひ一度行ってみてはいかがでしょうか。
また、以下の記事では明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。本記事があなたのお役に立てることを願っております。
