さまざまな技法を用いた漆器作品6選!代表的な技法まで詳しく紹介
漆器の作品には多くの技法が施されており、技法によって全く違う雰囲気の作品ができ上がります。だからこそ漆器作品には一言では表せない深みがあり、日本内外で高い評価を得て、多くの人を魅了してきました。
また、技法だけではなく、表現の方法を工夫することで現代アートとしての目新しい漆器作品も出てきています。漆器の可能性はどんどん広がっており、見る人を楽しませてくれるのです。
- どんな漆器の作品があるのか知りたい
- 歴史的名品だけでなく、現代風の漆器作品も知りたい
今回は上記のように幅広い漆器の作品に興味があるという方へ向けて、さまざまなジャンルの漆器作品を紹介していきます。作品に使われている技法も分かり易く解説するので、最近漆器に興味を持ち始めたという方も必見です。
漆器作品に用いられる代表的な技法
漆器作品には、さまざまな塗り方や装飾の仕方、作り方があります。特に有名なものが、蒔絵や螺鈿です。
きらびやかな装飾は輸出漆器としても人気で、漆器文化の広がりとともに多くの技法が誕生していきました。ここでは、次の5つの有名な技法について解説していきます。
- 蒔絵
- 螺鈿
- 沈金
- 髹漆
- 乾漆
蒔絵
蒔絵とは、金の粉「蒔絵紛」を使って装飾する技法のことです。漆を塗ったり、漆で絵を描いた器の上に蒔絵紛をまきます。
漆が乾いた後、蒔絵紛をまいた部分を磨くことで輝きが生まれます。蒔絵は他の国にない技法であったため、蒔絵は輸出漆器としても人気を博し、日本だけでなく世界で愛される技法になりました。
また、蒔絵は鎌倉時代に三種類にカテゴライズされています。「平蒔絵」「研出蒔絵」「高蒔絵」の三つです。なかでも一般的な蒔絵とされているのは「平蒔絵」です。
蒔絵の有名な作品としては、国宝にもなっている「籬菊螺鈿蒔絵硯箱」があげられます。この作品は鶴岡八幡宮に所蔵されており、咲き乱れる菊の花とその周りを飛び回る小鳥が美しく感じられます。
なお、下の記事では蒔絵について詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
螺鈿
螺鈿とは、貝殻を装飾に用いた技法のことです。用いられる主要な貝は、夜光貝や白蝶貝、青貝、アワビなど、貝殻の裏側が美しく光っていて表面がらせん状になっている貝です。
このらせんの「螺」が「螺鈿」の「螺」の由来となっています。「鈿」は貝殻などをさしています。また、螺鈿の起源はエジプトです。紀元前3,000年には作られていたと考えられており、螺鈿の技法が日本へ渡ったのは奈良時代のことでした。
鎌倉時代になると螺鈿は一気に流行します。蒔絵は輸出漆器として有名でしたが、実は螺鈿もそのきらびやかな装飾が海外でも人気となり、高級な輸出漆器としても扱われていました。
沈金
沈金とは、沈金ノミで掘った溝に漆を流し込み、その上から金箔などを沈めて模様を出す技法です。漆の上から金箔を入れることで、金箔が沈んでいるように見えます。
これが沈金という言葉の起源だといわれています。金箔以外には銀や漆黒が用いられるケースがあり、それぞれ「沈銀」「沈黒」と呼ばれています。
また、沈金はもともと中国の「鎗金」から生まれたとされています。中国から日本へ沈金が伝わり、室町時代には盛り上がりを見せ、日本中に広まっていきました。
沈金を使った漆器で特に有名なものには、石川県の輪島塗や会津塗などがあります。
髹漆
髹漆とは、漆を塗ること自体の技法を指します。「下地を塗ること」「下地の上から重ね塗りをすること」「仕上げで漆塗を行うこと」これらすべてが髹漆に含まれます。
また、下地選びも工程の一つとして含まれており、髹漆は漆に関する技法で一番古いものともいわれているのです。髹漆には下地の上から漆を塗る方法だけでなく、木地にそのまま漆を塗る方法もあり、この2つの方法がスタンダードになっています。
もちろん完成後の雰囲気や耐熱性などにも違いが出るため、方法を変えるだけでも違った仕上がりを楽しむことができます。髹漆で有名な漆芸家としては、赤地友哉や増村益城、大西勲、小森邦博などがあげられます。
乾漆
乾漆とは、麻布と漆のみを使った技法です。漆を含んだ粘土を使って成形していくため、自由な形状を作りやすいのが特徴です。
粘土のため乾燥するとひび割れの可能性がありますが、高純度の漆を使うことでなめらかな見た目を実現することができます。軽くて丈夫なものを作れるのも特徴です。
乾漆技法が用いられていることで有名なのは、奈良の興福寺にある阿修羅像です。734年に作られ、国宝にもなっています。粘土で自由な形を作れることで、阿修羅像のような複雑で繊細な仏像まで作ることができるのです。
様々な技法を用いた漆器作品
ここまで、漆器に用いられるさまざまな技法をご紹介しました。これらの技法は、単体で使われることもあれば組み合わせて使われることもあります。
ここからは、さまざまな技法を用いた代表的な6つの作品を解説していきます。
- 梨子地九曜紋散松橘蒔絵大角赤手箱(なしじくようもんちらしまつたちばなまきえおおすみあかてばこ)
- 金梨地枝橘文蒔絵鞍・同鐙(きんなしじえだたちばなもんまきえくら・どうあぶみ)
- 群鹿蒔絵笛筒(ぐんろくまきえふえづつ)
- 沃懸地雲龍蒔絵鞍(いかけじうんりゅうまきえくら)
- 金梨地蕪蒔絵螺鈿鞍(きんなしじかぶまきえらでんくら)
- 埋木象文嵌入硯箱(うもれぎぞうもんかんにゅうすずりばこ)
梨子地九曜紋散松橘蒔絵大角赤手箱(なしじくようもんちらしまつたちばなまきえおおすみあかてばこ)
梨子地九曜紋散松橘蒔絵大角赤手箱は、江戸時代につくられた作品です。池と築山から生える松と橘の樹がうまく表現されています。
また、模様の間には銀平文による九曜紋が散らされています。九曜紋を用いる大名家の婚礼調度と考えられている作品です。
金梨地枝橘文蒔絵鞍・同鐙(きんなしじえだたちばなもんまきえくら・どうあぶみ)
金梨地枝橘文蒔絵鞍は、橘の果実を高蒔絵で表した作品です。井伊家の家紋である橘がモチーフにされています。
作者は江戸時代前期に活躍した鞍打師である道綱です。
群鹿蒔絵笛筒(ぐんろくまきえふえづつ)
群鹿蒔絵笛筒は、江戸時代につくられた作品です。金高蒔や金貝、螺鈿、鉛貼付などの手法によって群鹿が表現されています。
作者は本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)とされており、文様と技法の調和がとれていることが特徴です。
沃懸地雲龍蒔絵鞍(いかけじうんりゅうまきえくら)
沃懸地雲龍蒔絵鞍は、漆塗りの上に金粉や銀粉を流し、上から漆を塗り重ねて磨く技法・「沃懸地」が施されている作品です。江戸時代初期から中期に製作され、献上用の物だとされています。
大きな龍が金蒔絵で表現されており、豪華で美しい作品です。
金梨地蕪蒔絵螺鈿鞍(きんなしじかぶまきえらでんくら)
金梨地蕪蒔絵螺鈿鞍は、江戸幕府8代将軍・徳川吉宗の常用の品とされていた作品です。金梨地に蕪を銀打出被せ、葉を金高蒔絵と螺鈿技法で表現しています。
金粉を蒔いた梨子地が美しく、武家の間でも縁起物とされていた作品です。
埋木象文嵌入硯箱(うもれぎぞうもんかんにゅうすずりばこ)
埋木象文嵌入硯箱は、江戸時代中期に活躍した漆芸師・小川破笠(おがわはりつ)による作品です。埋木材に金属粉を蒔き、色絵の陶板を嵌入して像の図柄が描かれています。
銀座真生堂では明治工芸品を取り扱っております
銀座真生堂では、漆器が海外に輸出されていたのと同じ時期に数多く輸出された明治工芸品「七宝焼」を取り扱っております。七宝焼は美しい模様や色彩が表現された、現代の技術では再現できないとされる超絶技巧品です。
銀座真生堂は、唯一の明治期の七宝焼専門店として常時、並河靖之、濤川惣助など名工の作品を保有できています。美術館などでガラス越しにしか見ることが出来なかった並河靖之、濤川惣助の作品を実際にお手に取って鑑賞、ご購入出来る唯一のギャラリーです。
また、銀座真生堂では所有している作品を美術館での展覧会などへ貸出すなど文化活動も行なっております。ご興味のある方は、気軽にお問い合わせください。
まとめ
本記事では、日本の代表的な工芸品である漆器の技法や、さまざまな技法を用いた作品を紹介しました。漆器には今や多くの技法が存在しており、その掛け合わせで幅広い作品が生まれています。
漆器は日本だけでなく海外の大きな美術館でも展示されているので、興味のある方はぜひ一度行ってみてはいかがでしょうか。
また、以下の記事では明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。本記事があなたのお役に立てることを願っております。