明治工芸

伝統工芸品の蒔絵ってなに?歴史や種類まで詳しく解説

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日本の伝統工芸品のひとつとして知られる「蒔絵」。蒔絵粉と呼ばれる金・銀の金属粉によって装飾された蒔絵はきらびやかで美しく、多くの人を魅了しました。

その人気は日本だけにとどまらず、海外でも「Makie」と呼ばれて今もなお親しまれています。まさに日本を代表する工芸品のひとつといえるでしょう。

  • 「蒔絵にはどんな種類があるの?」
  • 「蒔絵が作られるようになった歴史が知りたい!」

蒔絵に興味のある方の中には、上記のようなことを知りたいと思っている方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、日本の伝統工芸品である蒔絵について解説します。蒔絵の歴史や種類、制作工程まで解説するので、ぜひ参考にしてください。

蒔絵とは

蒔絵とは、漆工芸の代表的な加飾技法のひとつです。漆で絵や文様を描き、蒔絵粉と呼ばれる金属粉を蒔いて装飾することから「蒔絵」と呼ばれています。

金や銀の金属粉を用いてさまざまな絵柄が描かれており、きらびやかで美しいことが特徴です。明治時代には、近代化に必要な外貨を取得するために、海外輸出向けの工芸品として海外に輸出されるようになります。

その後、海外から高く評価され、ジャポニズムを巻き起こすきっかけとなりました。

蒔絵の歴史

蒔絵は、奈良時代・正倉院の「金銀鈿荘唐大刀(きんぎんでんそうからたち)」の鞘の装飾に用いられた「末金鏤(まっきんる)」が始まりです。「末金鏤」とは、金粉に漆を混ぜて絵柄を描き、透明な漆を塗って木炭で研ぎ出したものです。

現代に伝わる「研出蒔絵(とぎだしまきえ)」とほぼ同じ技法でつくられていることから、蒔絵の始まりは奈良時代とされています。実際に蒔絵と呼ばれるようになったのは平安時代からです。

平安時代になるとさまざまな蒔絵の技法が生まれ、貴族たちに家具調度品として用いられるようになります。その後、鎌倉時代に平蒔絵や研出蒔絵といった蒔絵の基本的な技法が誕生しました。

蒔絵の技術が大きく進歩したのは室町時代です。足利氏が蒔絵を多く作らせるようになり、華やかな調度品がつくられるようになります。

江戸時代には、新しい蒔絵の図柄が次々に誕生します。その後、蒔絵は海外に輸出されるようになり、ヨーロッパの人々から高く評価されるようになりました。

蒔絵の種類

蒔絵には、大きく分けて次の3つの種類があります。

  • 平蒔絵
  • 研出蒔絵
  • 高蒔絵

一般的に「蒔絵」とは、平蒔絵のことを指します。蒔絵の中で最も基本的な技法が使われていることが特徴です。

研出蒔絵とは、最も古い技法が使われている蒔絵のことです。平蒔絵との違いは、絵や文様を研ぎ出す工程があるところにあります。絵や文様を研ぎ出すことで、優しい印象の蒔絵にすることができます。

高蒔絵は、下地よりも蒔絵部分が高くなっている蒔絵のことです。蒔絵の中で最も難しい技術が必要であり、立体的かつ遠近感が表現されています。

また、蒔絵には上記の3つを応用した肉合( ししあい )研出蒔絵や、白木地を生かした木地蒔絵などがあります。

蒔絵技法の種類

蒔絵には、表現に深みを持たせる細かな「 蒔絵技法 」があります。ここでは、蒔絵技法の種類を紹介します。

項目詳細
描割( かきわり )葉の葉脈や鳥の翼などの境界線を表す部分に漆を塗らずに蒔絵粉を蒔く技法
毛打ち( けうち )磨き仕上げが終わった後の蒔絵の上に平蒔絵で線を描く技法
針猫(はりがき)蒔絵粉を蒔いた後に針などの先端が鋭利なもので細い線を描く技法
螺鈿(らでん)貝殻を文様に切り、はめ込むまたは貼り付ける技法
卵殻塗( らんかく )ウズラの卵の殻を酢につけて黒い模様を取り、形を整えて漆で貼り付ける技法
銀露( ぎんつゆ )葉についた露を表現するために用いる技法
置平目( おきひらめ )平目粉(丸い金粉を小判型に押し潰したもの)を並べて貼り付ける技法
絵梨子地( えなしじ )蒔絵の文様以外の面に金銀粉などを蒔く技法 

蒔絵技法を知っていることで、蒔絵の魅力をより感じることができます。なお、下の記事では蒔絵の種類を詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

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蒔絵の魅力

蒔絵の魅力は、蒔絵粉によって生み出される豊かな奥行きです。色や大きさの異なる蒔絵粉を使い、密度の調整や蒔き方を工夫することで平面でありながら奥行きを生み出すことができます。

奥行きによって表現に味を出すことができ、より多彩な表現が可能です。また、乾燥させて塗り重ねる作業を繰り返して厚みをもたせることで、立体的にも奥行きを生み出すことができます。

蒔絵の奥行きや高低差を表現する工程には、数ヶ月という長い期間がかかります。蒔絵の魅力は、蒔絵師たちの人並みならぬ努力と繊細な表現力にあるといえるでしょう。

蒔絵の作品

ここからは、蒔絵の作品を紹介していきます。今回紹介するのは次の3つの作品です。

  • 海辺蒔絵文台・硯箱(みずべまきえぶんだい・すずりばこ)
  • 手箱蒔絵硯箱(てばこまきえすずりばこ)
  • 蝶牡丹蒔絵沈箱(ちょうぼたんまきえじんばこ)

それぞれの作品について以下で詳しく解説していきます。

海辺蒔絵文台・硯箱(みずべまきえぶんだい・すずりばこ)

出典元:MOA美術館
作品名海辺蒔絵文台・硯箱(みずべまきえぶんだい・すずりばこ)
作者川之辺一朝

海辺蒔絵文台・硯箱は、明治時代に川之辺一朝によって作られた作品です。文台と硯箱が一具をなす伝統的な形式の作品となっています。

海浜の小家や松、満開の桜樹が様々な蒔絵の技法で表現されていることが特徴です。また、硯箱は外側だけでなく、内側も繊細な描写がなされており、鳥たちの空を舞う姿が優雅に描かれています。

手箱蒔絵硯箱(てばこまきえすずりばこ)

出典元:MOA美術館
作品名手箱蒔絵硯箱(てばこまきえすずりばこ)
作者小川松民

手箱蒔絵硯箱は、明治時代に小川松民によって作られた作品です。蓋表の手箱は高蒔絵に螺鈿や切金で表現されており、内側は梨地に研出蒔絵で籬菊と小鳥を表現しています。

正方形をした硯箱であり、蓋表に籬(まがき)の中に咲く菊と、小鳥、土坡(どは)などが緻密に描かれていることが特徴です。外側のデザインは、黒の美しさと蓋表の手箱の繊細な描写が技術の高さをうかがわせます。

蝶牡丹蒔絵沈箱(ちょうぼたんまきえじんばこ)

出典元:MOA美術館
作品名蝶牡丹蒔絵沈箱(ちょうぼたんまきえじんばこ)
作者白山松哉

蝶牡丹蒔絵沈箱は、明治時代に白山松哉によって作られた作品です。牡丹唐草と蝶が、金の平蒔絵に付描、針描、描割で表現されています。

器表全体は、金の鑢(やすり)粉を器の表一面に密に蒔きつめた「金沃懸地」となっていることが特徴的です。

なお、下の記事では蒔絵の作品を紹介しているので、あわせて参考にしてください。

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蒔絵の制作工程

ここでは、蒔絵の制作工程をみていきましょう。蒔絵の制作工程は、蒔絵の種類や技法によって異なります。そのため、今回は蒔絵のおおまかな制作工程を紹介します。

  • 漆で模様を描く
  • 漆の上に蒔絵粉を蒔く
  • 漆を塗りさらに木炭で研ぐ
  • 鹿の角粉でみがく

基本的に蒔絵ではまず、どのような蒔絵を描くかを決めていきます。どんな金粉を使うのか、どの色漆を使うかなど細かく決めるため、最も時間のかかる作業です。

その後、漆の上に蒔絵粉を蒔いて研いでいきます。最後に仕上げの磨きを行なって完成です。

銀座真生堂では明治工芸品を取り扱っております

銀座真生堂では、蒔絵と同じ時代に作られた明治の工芸品「七宝焼」を取り扱っております。七宝焼は美しい模様や色彩が表現された、現代の技術では再現できないとされる超絶技巧品です。

銀座真生堂は、唯一の明治期の七宝焼専門店として常時、並河靖之、濤川惣助など名工の作品を保有できています。美術館などでガラス越しにしか見ることが出来なかった並河靖之、濤川惣助の作品を実際にお手に取って鑑賞、ご購入出来る唯一のギャラリーです。

また、銀座真生堂では所有している作品を美術館での展覧会などへ貸出すなど文化活動も行なっております。ご興味のある方は、気軽にお問い合わせください。

まとめ

本記事では、日本の伝統工芸品である蒔絵の歴史や種類、制作工程まで解説しました。蒔絵は、どんな蒔絵技法を使うかによって違った魅力があります。

中でも、江戸や明治時代に作られた蒔絵は、より高い技術で作られています。興味のある方は、博物館や美術館で実物を見てみましょう。

また、以下の記事では明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。本記事があなたのお役に立てることを願っております。

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銀座真生堂
銀座真生堂
メディア編集部
七宝焼・浮世絵をメインに古美術品から現代アートまで取り扱っております。 どんな作品でも取り扱うのではなく私の目で厳選した美しく、質の高い美術品のみを展示販売しております。 このメディアで、美術品の深みや知識を発信していきます。
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