伝統工芸品で知られる陶磁器とは?種類や歴史、魅力、制作工程までわかりやすく解説
日本で古くから作られ、今や生活に欠かせない工芸品である陶磁器。始まりは縄文時代とされており、明治時代には海外から高く評価されるまでになりました。
中には、伝統工芸品として指定されているものも多く、日本を代表する工芸品といえます。とはいえ、工芸品とは何かと聞かれると詳しくはわからないという方も少なくないでしょう。
- 陶磁器って具体的にはどんなもの?
- 陶磁器がどのように発展してきたのか歴史が知りたい!
- 有名な陶磁器が何か知りたい!
陶磁器に興味がある方は、上記のような情報を求めているはず。
そこで本記事では、陶磁器について詳しく解説します。陶磁器の種類や歴史、魅力など、あらゆる視点から陶磁器を解説するため、ぜひ参考にしてください。
陶磁器とは
陶磁器とは、土を練って形を作り、焼き固めたものです。焼成した素地(きじ)の硬度や密度、吸水性、釉薬(ゆうやく)の有無などの物理的条件によって、次の4つに大別されます。
それぞれについて詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。
土器
土器は、粘土を成形して施釉をせずに約700〜800度の低温で焼成したやきものです。縄文土器や弥生土器、中国の紅器などが例として挙げられます。
土器の特徴は、吸水性と耐火性が高いことです。耐火性が高いため、煮炊きや貯蔵に適しています。
また、吸水性が高いことから植物を育てるのに適しており、現代では植木鉢などに使用されています。他にも、黒や茶色・褐色・赤味のつよい色など、バリエーションが豊かなことも特徴のひとつです。
陶器
陶器は、陶土と呼ばれる粘土を成形して施釉を行い、約1,000〜1,200度の高温で焼成したやきものです。日本三大陶器として知られる美濃焼や瀬戸焼などが例として挙げられます。
陶器の特徴は、素地土がさまざまな発色をしていたり、熱伝導率が低いことです。熱伝導率が低いことから「熱しにくく冷めにくい」ため、熱い飲み物を飲む場合になどに適しています。
また、釉薬を使用していることで水漏れや汚れがつきにくく、強度が高いことも特徴のひとつです。
炻器(せっき)
炻器(せっき)とは、粘土を成形して施釉をせずに約1,200〜1,300度の高温で焼成したやきものです。釉薬を使わずに高温で素地が焼き締まることから「無釉焼き締め陶(むゆうやきしめとう)」とも呼ばれています。
外装に使われているタイルや備前焼が主な例です。炻器は5世紀ごろに朝鮮半島から新しい技術が導入されたことで作られるようになりました。
炻器の特徴は、吸水性がなく焼締りが良いことから強度があることが特徴です。また、陶器と磁器の中間の性質を持っていると言われています。
磁器
磁器は、ガラス質(珪酸)を多く含む磁土を成形して、施釉を行い約1,300度の高温で焼成したやきものです。日本三大陶器として知られる有田焼や瀬戸焼などが例として挙げられます。
磁器の特徴は、陶器や土器と違って吸水性がほとんどなく、高温で焼き締まっているため頑丈であることです。割れにくいという面から、現在でも多く使用されています。
また、透光性があることも特徴のひとつです。薄手の磁器を光にかざすと、光を通すつくりになっています。
陶磁器の歴史
陶磁器の歴史は縄文時代に始まります。そこから弥生時代に稲作文化とともに発展し、形や文様が簡素な弥生土器が生まれました。
古墳時代には土師器(はじき)や埴輪(はにわ)など土器文化が展開され、5世紀に朝鮮半島から新たな製陶技術が伝わると須恵器が誕生します。
陶磁器が多く生産され始めたのは平安時代です。平安時代の末から常滑や渥美をはじめ、越前・信楽・丹波・備前など各地で見られるようになりました。
その後、室町時代になると国産陶器の地位が飛躍的に向上し、日本陶磁史における一つの黄金時代を迎えることになります。明治時代には海外から高く評価され、ジャポニズムを巻き起こすきっかけとなりました。
陶磁器の魅力
陶磁器の魅力は、長い歴史から生まれた多様性にあります。日本の陶磁器が海外から高く評価され、ジャポニズムを巻き起こしたのも作品の多様性が大きな理由です。
例えば、海外のやきものは左右対称で、シリーズごとに同じデザイン、絵柄が入れられている作品が多い傾向にあります。一方で、日本の陶磁器は左右対称ではなかったり、器の厚みも均等でなかったりなど、独自の美意識を取り入れた作品が多いです。
一つひとつの陶磁器に、陶工たちの美意識によって生み出される独自性・多様性が取り入れられていることが陶磁器の魅力です。
代表的な陶磁器
ここからは、代表的な陶磁器を紹介していきます。今回紹介するのは日本三大陶器で知られる次の3つです。
それぞれについて以下で詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。
有田焼
有田焼は、佐賀県有田町を中心に生産される陶磁器です。江戸時代に伊万里の港から輸出されたことから「伊万里焼(いまりやき)」とも呼ばれています。
有田焼は、滑らかな肌触りと、白く美しい磁肌に華やかな絵付けがなされていることが特徴です。耐久性が高く、日常使いがしやすいことから現代でも日用品として親しまれています。
また、有田焼は、古伊万里様式や柿右衛門様式、鍋島様式の3つに分類されるのが一般的です。
美濃焼
美濃焼は、岐阜県の東濃地方の一部の地域(土岐市、多治見市、瑞浪市、可児市)で製作されていた陶磁器です。奈良時代に朝鮮半島から伝わった須恵器とともに、ろくろと穴窯が伝えられたことが起源とされています。
美濃焼は一つの様式を持っておらず、黄瀬戸や瀬戸黒、志野、織部といった多種多様なやきものであることが特徴です。実際に伝統工芸品に指定されている美濃焼は15種類もあります。
また、美濃焼は国内で生産されている陶磁器の約5割を占めており、国内No.1のシェアを誇っています。
瀬戸焼
瀬戸焼は、愛知県瀬戸市とその周辺で生産される陶磁器です。鎌倉初期に宋で陶法を学んだ加藤四郎左衛門景正が窯を開いたのが始まりといわれています。
中世から現在まで生産が続く代表的な6つの窯「日本六古窯(信楽・備前・丹波・越前・瀬戸・常滑)」のひとつに数えられています。耐水性に優れており、釉薬ならではの色や模様が大きな特徴です。
また、日本の陶磁器の中では珍しく、磁器と陶器の両方を作っていることも特徴です。磁器は「新製焼」または「染付焼」、陶器は「本業焼」と呼ばれています。
陶磁器の製作工程
ここからは、陶磁器の製作工程を紹介します。一般的に陶磁器は以下の方法で製作されます。
- 陶土を作る
- 成形する
- 乾燥させる
- 素焼き
- 装飾
- 本焼き
まずは、陶土を作ることから始めます。陶土ができたら、ろくろや手びねりなどの方法で成形をしていきます。
成形したら次は乾燥です。十分に乾燥させた後、高台を削るなどの仕上げをしてから低い温度で素焼きを行います。
続いて、素焼きをした器物に絵付けや化粧土などの装飾を施し、釉薬をかけていきます。最後に本焼きをして完成です。
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まとめ
本記事では、陶磁器の種類や歴史、魅力など、あらゆる視点から陶磁器を解説しました。多様性が魅力の陶磁器は今でも多くの人に親しまれています。
伝統工芸品に指定されているものも多く、興味のある方はぜひ手に入れてみましょう。
また、以下の記事では明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。本記事があなたのお役に立てることを願っております。