明治工芸

自在置物とは?歴史や魅力、制作工程までわかりやすく解説

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「自在置物ってあまり聞いたことがないけど、どんなものなの?」
「自在置物がどのように発展してきたのか歴史が知りたい!」

自在置物とは、江戸時代から培われてきた日本の金工技術に裏打ちされた伝統工芸品です。非常に高度な技巧で作られており、明治時代には海外から高く評価されました。

日本が「美術工芸の国」として認知されるきっかけとなった工芸品であり、日本を代表する明治工芸のひとつです。しかし、現在では一種のロストテクノロジーとされており、自在置物についてよくわからないという方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、自在置物の歴史や魅力、代表的な作者などを解説します。自在置物に興味があって詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

自在置物とは

自在置物とは、鉄や銀、銅などの金属を使って、タカやヘビ、エビ、カニ、カマキリ、チョウなどの動物を形づくった工芸品です。足や手などの各パーツが細かく独立して作られており、胴体や関節などを自由自在に動かすことができます。

非常に高度な技巧で作られていることから、現代では再現不可能とされています。自在置物は主に、武士の鎧や兜などを製作していた甲冑師によって作られました。

自在置物が作られるようになった背景としては諸説ありますが、大名への手みやげにするためだったのではないかとする説が有力です。

自在置物の歴史

自在置物が日本で作られるようになったのは、江戸時代中期とされています。江戸時代中期になると、戦国時代と比べて戦は少なくなり、平和な世の中へと移り変わっていきます。

しかし、平和な世の中に移り変わっていくのと同時に甲冑師たちは仕事が失われていきました。そこで甲冑師たちは自在置物を大名に贈り、自身の技術力の高さをアピールするようになります。

そういった背景から自在置物は江戸時代に盛んに作られるようになり、発展していったとされています。また、明治時代以降も自在置物は製作されていました。

海外における博覧会に出品されると、精巧な自在置物は海外で高く評価されるようになります。いわゆるジャポニズムの到来です。

しかし、一時は隆盛を誇った自在置物ですが、ジャポニズムの終焉や世界大戦が勃発したことによって衰退の一途を辿ることになりました。

自在置物の魅力

自在置物の魅力は、超絶技巧と呼ばれる精密で繊細な描写と技術力の高さです。全て職人の手作りで制作されており、まるで本物のような存在感・躍動感があります。

また、胴体や手足、触覚などの各パーツが独立して作られていることから、自由自在に動かすことができるのも魅力のひとつです。

高い技術力の中に職人の「遊び心」が取り入れられていることは、江戸・明治時代の甲冑師たちの技術力の高さを物語っているといえるでしょう。

自在置物の代表的な作者

ここでは、自在置物の代表的な作者を紹介していきます。今回紹介するのは次の3人です。

それぞれの人物について詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。

明珍宗察(みょうちんむねあき)

明珍宗察は、甲冑(かっちゅう)を専門に製作していた工人です。名字にあたる「明珍」は、古くから代々続いた甲冑工人の家系になります。

「明珍」は特に鍛錬と打つ技法に長けており、戦国時代より甲冑師として栄え、江戸時代には鑑定も行なっていました。 宗察は、江戸の明珍家・本家の宗介を師として教えを受けていた人物です。

広島藩浅野家や福井藩松平家の甲冑を製作し、冑師としても実績を残しています。代表的な作品としては、1713年に作られた自在龍置物が挙げられます。

里見重義(さとみしげよし)

里見重義は1843年に生まれ、江戸時代から明治時代にかけて活躍した工人です。刀装具の鑑定を学んだのち、明治時代には浅草三筋町で暮らしていました。

代表的な作品としては、自在龍置物があります。

高瀬好山(たかせこうざん)

高瀬好山は1869年に石川県で生まれ、明治時代に活躍した工人です。明治期に自在置物のプロデュースを精力的に行なった人物として知られています。

好山は元々工場の陶器部として従事していましたが、京都へ異動したのち冨木伊助に金工を学ぶようになります。その後、独立して大正から昭和初期まで内国勧業博覧会などに作品を出品していました。

代表的な作品としては、自在蟷螂置物や自在蝶置物などが挙げられます。

自在置物の製作工程

ここでは、自在置物の製作工程を紹介していきます。自在置物を製作していく大まかな流れは次の通りです。

  • 計測・設計図作成
  • 切り出し・加工
  • 模様の打ち出し
  • 組み立て・微調整
  • 煮色(にいろ)

自在置物を製作する際には、まず実際の生物を解体し、計測や詳細な設計図を作成します。その後、設計図に沿って金属を切り出し、加工していきます。

加工の段階では、生物独特の模様などを打ち出していく作業も必要です。脚や胴体など、それぞれのパーツに同様の作業を施していきます。

全てのパーツが揃ったら、いよいよ組み立て作業です。組み立てながら、動きを微調整していきます。最後に、煮色という工程で色を変化させて完成です。

銀座真生堂では明治工芸品を取り扱っております

銀座真生堂では、自在置物と同じ時代に作られた明治の工芸品「七宝焼」を取り扱っております。七宝焼は美しい模様や色彩が表現された、現代の技術では再現できないとされる超絶技巧品です。

銀座真生堂は、唯一の明治期の七宝焼専門店として常時、並河靖之、濤川惣助など名工の作品を保有できています。美術館などでガラス越しにしか見ることが出来なかった並河靖之、濤川惣助の作品を実際にお手に取って鑑賞、ご購入出来る唯一のギャラリーです。

また、銀座真生堂では所有している作品を美術館での展覧会などへ貸出すなど文化活動も行なっております。ご興味のある方は、気軽にお問い合わせください。

まとめ

本記事では、自在置物の歴史や魅力、代表的な作者などを解説しました。自在置物は、超絶技巧と呼ばれる精密で繊細な描写と技術力の高さが魅力の工芸品です。

残念ながら、現代では一種のロストテクノロジーとされており、身近に見れるものではありません。そのため、実際の自在置物を見てみたいという方は、博物館や美術館に足を運んでみてください。超絶技巧と呼ばれる江戸・明治の技術を実際に体感してみましょう。

また、以下の記事では明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。本記事があなたのお役に立てることを願っております。

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執筆者
銀座真生堂
銀座真生堂
メディア編集部
七宝焼・浮世絵をメインに古美術品から現代アートまで取り扱っております。 どんな作品でも取り扱うのではなく私の目で厳選した美しく、質の高い美術品のみを展示販売しております。 このメディアで、美術品の深みや知識を発信していきます。
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