【日本の技工】薩摩焼って何?歴史や魅力、制作工程まで詳しく解説

工芸品の中でも多くの人に知られ、親しまれ続けている薩摩焼。詳しくは知らないけど、薩摩焼の存在は知っているという方も少なくないでしょう。
薩摩焼は400年以上の歴史があり、名工たちの努力によって今もなお引き継がれています。現在では国の伝統工芸品に指定されており、日本だけでなく海外でも多くの人気を集めています。
- 薩摩焼について詳しく知りたい
- 薩摩焼の歴史を知りたい
- 薩摩焼の種類が知りたい
薩摩焼に興味がある方は、上記のような情報を求めているいるはず。
そこで本記事では、日本の伝統工芸品・薩摩焼について詳しく解説します。歴史や種類、制作工程など、薩摩焼についても情報を網羅しているため、ぜひ参考にしてください。
薩摩焼とは
薩摩焼は、鹿児島で誕生した伝統工芸品です。戦国時代から制作されるようになり、大きく分けて「本薩摩」と「京薩摩」の2種類があります。
本薩摩とは、一般的によく知られている鹿児島で作られた薩摩焼です。本薩摩には、白薩摩(白もん)と黒薩摩(黒もん)の2種類があります。
黒薩摩(黒もん)とは、地元・鹿児島の鉄分を多く含む土を原料として作られる薩摩焼です。鉄分の多い土を使用していることから真っ黒な見た目をしていることが特徴です。
白薩摩(白もん)とは、貴重な白陶土を原料として作られる薩摩焼です。黒薩摩とは対照的に、白く美しい見た目をしていることが特徴です。
京薩摩は、明治時代初めに京都で作られた薩摩焼です。絢爛豪華な色彩や綿密な絵付が特徴であり、その高い技術から超絶技巧と評されています。海外から高く評価され、次第に京薩摩の人気は鹿児島で作られる本薩摩を凌駕するものとなりました。
薩摩焼の歴史
薩摩焼は、1592年〜1598年に行われた「文禄・慶長の役」、別名「朝鮮出兵」がきっかけで作られるようになります。朝鮮出兵の際に、薩摩藩主の島津義弘が朝鮮から80人の陶工を連れてきて、薩摩藩各地に窯を開いたことで薩摩焼が誕生しました。
その後、金海(きんかい)や朴平意(ぼくへいい)といった陶工たちによって、薩摩焼は多様な展開をしていきます。明治時代になると、パリ万国博覧会に薩摩焼が出典されたことをきっかけに、海外からの人気を集めるようになります。
いわゆる「ジャポニズム」の到来です。2002年には、国の伝統的工芸品に指定され、薩摩焼は工芸品としての価値を確立していくことになりました。
薩摩焼の歴史については下の記事でより詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

薩摩焼の種類
薩摩焼は陶工たちによって多様な発展をしていく中で、5つの流派が生まれます。代表的な流派は次の5つです。
- 竪野系(たての)
- 龍門司系(りゅうもんじ)
- 苗代川系(なえしろがわ)
- 西餅田系(にしもちだ)
- 平佐系(ひらさ)
現代でも残っているのは、苗代川系・龍門司系・竪野系の3つになります。
苗代川系は、朴平意が苗代川に移住して開いた窯場です。元々は、黒薩摩を手がけていましたが、のちに「錦手」や「金襴手(きんらんで)」の制作をするようになります。
龍門司系は、芳仲(ほうちゅう)が加治木龍口坂に開いた窯場です。黒薩摩の制作を得意としており、美しい姿の使いやすい日用品を多く焼いていました。
竪野系は、金海が姶良郡姶良町である帖佐(ちょうさ)に開いた窯場です。白薩摩の起源になったとされており、薩摩焼の主流をなしていた流派として知られています。
薩摩焼の魅力
薩摩焼は、本薩摩と京薩摩それぞれに違った魅力があります。
本薩摩 | 京薩摩 |
黒薩摩:シンプルで重厚感のあるデザイン 白薩摩:繊細な模様と「貫入(かんにゅう)」が美しい | ・超絶技巧と評される絢爛豪華な色彩と細密な絵付 ・白薩摩と同様に「貫入(かんにゅう)」が美しい |
黒薩摩の魅力は、シンプルで重厚感のあるデザインです。主に庶民の間で使われていた黒薩摩ですが、深みのある黒色は高級感を感じさせます。
白薩摩の魅力は、繊細な模様と「貫入」が美しいことです。「貫入」とは、陶磁器の表面にできる細かいひび模様を指します。
一般的には失敗とされるヒビをあえて入れることで、繊細な模様と美しさを表現しています。海外でも高く評価され、現在でも装飾品や置物として愛用されています。
京薩摩の魅力は、超絶技巧と評される絢爛豪華な色彩と細密な絵付です。一つひとつの模様が繊細に描かれており、その高い技術は現代では再現できないと言われています。
次の記事では、薩摩焼の魅力についてより詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

薩摩焼の制作工程
ここからは、薩摩焼の制作工程を紹介します。一般的に薩摩焼は、以下の10の工程を経て再作されます。
- 坏土(はいど)づくり
- 水簸(すいひ)※白薩摩のみ
- 成形
- 乾燥・成形の仕上
- 乾燥
- 素焼
- 施釉
- 本焼
- 上絵付※白薩摩のみ
- 完成
まずは、数種類の陶土を練って坏土(はいど)づくりをしていきます。その後、ろくろを使って成形し、十分に乾燥させてから素焼していきます。
750度〜850度の窯で15〜16時間ほど素焼きをしたら、次の工程は薩摩焼に模様をつけていく施釉です。その後、720度〜800度の温度で6時間ほど本焼し、釉薬の飛びを綺麗にしたら完成です。
薩摩焼に関わる重要人物
薩摩焼に関わる重要人物としては、次の3人があげられます。
- 島津義弘(しまづよしひろ)
- 金海(きんかい)
- 朴平意(ぼくへいい)
島津義弘は、朝鮮から陶工たちを連れてきた人物であり、薩摩焼のはじまりに深く関わる人物です。戦国時代屈指の武将でありながら、学問や産業振興に秀でた文化人だったという一面もあります。
島津義弘がいなければ、薩摩焼は誕生していなかったと言えるでしょう。金海と朴平意は、島津義弘によって連れてこられた陶工たちです。
金海は竪野系の創始者であり、朴平意は苗代川系の創始者として知られている人物です。薩摩焼の発展に深く関わる陶工たちであり、現代の薩摩焼にも大きな影響を与えています。
とくに、朴平意は薩摩で初めて白陶土を発見した人物です。その結果、薩摩焼は黒薩摩と白薩摩の2つに分けられ、それぞれ違った魅力をもった工芸品として発展していくことになりました。
銀座真生堂では明治工芸品を取り扱っております

銀座真生堂では、薩摩焼と同じ時代に作られた明治の工芸品「七宝焼」を取り扱っております。七宝焼は美しい模様や色彩が表現された、現代の技術では再現できないとされる超絶技巧品です。
銀座真生堂は、唯一の明治期の七宝焼専門店として常時、並河靖之、濤川惣助など名工の作品を保有できています。美術館などでガラス越しにしか見ることが出来なかった並河靖之、濤川惣助の作品を実際にお手に取って鑑賞、ご購入出来る唯一のギャラリーです。
また、銀座真生堂では所有している作品を美術館での展覧会などへ貸出すなど文化活動も行なっております。ご興味のある方は、気軽にお問い合わせください。
まとめ
本記事では、日本の伝統工芸品・薩摩焼について詳しく解説しました。薩摩焼は数ある焼き物の中でも珍しく、同じ薩摩焼でありながら2つの種類があるという特徴があります。
現代でも、薩摩焼は時代の流れに合わせた発展を遂げ、人々に愛され続けています。薩摩焼に興味のある方は、ぜひ自分でも手に入れてみましょう。
また、鹿児島に行けば薩摩焼の制作工程や実際の作品を見ることができます。日本を代表する工芸品だからこそ、継承されてきた技術を実際に見てみることがおすすめです。
本記事があなたのお役に立てることを願っております。
また、以下の記事で明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。
