明治工芸

薩摩焼の魅力とは?本薩摩と京薩摩それぞれの魅力について詳しく解説

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薩摩焼は、日本の伝統工芸品として知られる鹿児島の焼き物であり、国内だけでなく海外でも多くの人気を集めています。海外では「SATSUMA」と呼ばれており、明治時代には日本を代表する特産品として世界各地に輸出されました。

そんな薩摩焼の始まりは、1592年〜1598年に行われた「文禄・慶長の役」、別名「朝鮮出兵」です。日本で作られるようになってから400年以上もの間、人々に愛され続けている薩摩焼はまさに日本を代表する伝統工芸品と言えるでしょう。

では、400年以上愛され続けている薩摩焼には一体どんな魅力があるのか気になるといった方も少なくないはずです。

「薩摩焼はなぜ人気なの?」
「人々を惹き寄せる魅力は何?」

そこで本記事では、上記のような疑問を持っている方に向けて、薩摩焼の魅力について解説していきます。また、薩摩焼の中でも代表的な「本薩摩」と「京薩摩」の魅力についても詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。

また、下の記事では薩摩焼について詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

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薩摩焼とは

薩摩焼は、陶工の手によって独自の発展を遂げた鹿児島の焼き物です。朝鮮出兵の際に、薩摩藩主の島津義弘が朝鮮から80人の陶工を連れてきて、薩摩藩各地に窯を開いたことがきっかけで誕生しました。

多くの陶工たちによって独自のスタイルが形成され、明治時代になると海外から高い評価を得るようになります。海外から薩摩焼が高く評価されると、日本各地でも薩摩焼が作られるようになっていきます。

その際に作られるようになったのが、超絶技巧と称される「京薩摩」です。その後、薩摩焼はパリ万国博覧会やウィーン万国博覧会などで海外から評価され「SATSUMA」とよばれて人気を集めるようになります。

薩摩焼の種類

薩摩焼には、大きく分けて次の2種類があります。

本薩摩と京薩摩は同じ薩摩焼でも材料や使用用途が異なります。以下でそれぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

本薩摩

本薩摩は、一般的によく知られている鹿児島で作られた薩摩焼です。白薩摩(白もん)と黒薩摩(黒もん)の2種類があり、それぞれ違った特徴・魅力を持ちます。

白薩摩(白もん)とは、貴重な白陶土を原料として作られる薩摩焼です。淡いクリーム色や象牙色の生地に、赤や青・緑などの絵の具で絵付けがされています。

白薩摩は、原料が貴重だったことや繊細な見た目から薩摩藩の御用品とされ、島津家や藩でしか使用することが許されていませんでした。明治時代になると、白薩摩は国の主要な輸出品となり、ヨーロッパの貴族や金持ちの人気を集めるようになります。

黒薩摩は(黒もん)、地元・鹿児島の鉄分を多く含む土を原料として作られる薩摩焼です。白薩摩とは異なり、鉄分の多い土を使用していることから真っ黒な見た目をしています。

身分の高い人に使用されていた白薩摩とは対照的に、黒薩摩は主に庶民の間で実用的な焼き物として使われていました。また、白薩摩よりも歴史が長く、釉薬を使った様々な技法で作られていることが特徴です。

茶人や大名の中にも黒薩摩を好んで愛用していた人が多く、白薩摩とは違った特徴・魅力を持った焼き物として発展を遂げています。

京薩摩

京薩摩は、明治時代初めに京都で作られた薩摩焼です。絢爛豪華な色彩や綿密な絵付が特徴であり、その高い技術から超絶技巧と評されています。

京薩摩は、海外における薩摩焼の評判を知った京都の窯元たちが、同様の焼き物の製作に取り組んだことで生まれました。とくに、京都の粟田口では多くの窯元が欧米向けの薩摩金襴手様式のやきものを制作し、大きな業績を上げていました。

しかし、京薩摩は欧州での対戦事情や日本の急速な工業化の推進などがきっかけで技術の継承が途絶え、その歴史に幕を閉じることになります。そのため、現代では「幻の京薩摩」と呼ばれています。

薩摩焼の魅力

いよいよここからは、薩摩焼の魅力について解説します。先述したように、本薩摩と京薩摩は同じ薩摩焼でも違った特徴・魅力を持ちます。

そこで、ここでは本薩摩(白薩摩・黒薩摩)と京薩摩それぞれの魅力を紹介します。ぜひ参考にしてください。

白薩摩(白もん)の魅力

白薩摩(白もん)の魅力は、繊細な模様と「貫入(かんにゅう)」が美しいことです。「貫入(かんにゅう)」とは、陶磁器の表面にできる細かいヒビ模様を指します。

一般的に、焼き物にヒビが入ると失敗作となります。しかし、白薩摩では白陶土に透明の釉薬をかけ、あえて表面にヒビを作ることで繊細な模様と「美しさ」を表現していることが特徴です。

また、金彩で細かい模様を施すなど、華やかなデザインにしていることも白薩摩の魅力のひとつといえます。

黒薩摩(黒もん)の魅力

黒薩摩(黒もん)の魅力は、シンプルで重厚感のあるデザインです。黒薩摩は主に日用品として使われていましたが、中には高級感のある作品も多く作られていました。

桜島の火山灰が多く含まれている土で焼かれた黒薩摩は、深みのある黒を表現できます。また、緑や褐色系の釉薬を塗ることによって、より深みと艶をだしていることも黒薩摩の魅力のひとつです。

日用品として身近ながらも、重厚感と高級感があることが黒薩摩が人々に親しまれている理由と言えるでしょう。

京薩摩の魅力

京薩摩の魅力は、超絶技巧と評される絢爛豪華な色彩と細密な絵付です。一つひとつの模様が繊細に描かれており、その高い技術は現代では再現できないと言われています。

また、京薩摩には白薩摩と同様に「貫入(かんにゅう)」が施されています。華やかさと品を兼ね備えた京薩摩の美しさは、海外でも高く評価されました。

次第に京薩摩の人気は、鹿児島で作られる本薩摩を凌駕するものとなりました。

薩摩焼の作り方

薩摩焼の魅力がわかったところで、どのように薩摩焼が作られているのか気になる方もいるでしょう。薩摩焼は基本的に以下の9つの工程を経て作られます。

手順詳細
①土作り成形しやすくするために数種の陶土を砕き混ぜ合わせる
②水簸(すいひ)こねた土を水に溶かし、沈殿した砂利・粗粒を集めて取り出す(白薩摩のみ)
③成形ロクロ・タタキ・鋳込(いこみ)で成形する
④成形の仕上げ成形したものを乾燥させ、仕上げを行う(黒薩摩はこの段階で彫りを入れる)
⑤乾燥素焼きの前に、天日乾燥または熱風乾燥を行う
⑥素焼き750度~850度で15時間~16時間かけて焼く
⑦施釉焼いたものの表面をなめらかにして、浸掛・流し掛の手法で釉をかける
⑧本焼き1250度前後で12時間以上かけて焼成する
⑨上絵付・金細工焼き上がった白薩摩に装飾を施す作業。

まずは、成形しやすくするために数種の陶土を砕き混ぜ合わせることから始めます。水簸(すいひ)とは、表面をなめらかにする作業で、白薩摩のみで行われる工程です。

成形が完了して乾燥を終えたら、750度〜850度で15時間〜16時間かけて素焼きをしていきます。素焼き後には釉をかけていき、1250度前後で12時間以上かけて本焼きを行なっていきます。

本焼きは、焼き物の種類によって焼成方法が変わることが特徴です。最後に白薩摩場合は、上絵付け・金細工をして完成です。

薩摩焼の現代での使われ方とお手入れ方法

ここでは、薩摩焼の現代での使われ方とお手入れ方法について紹介します。400年以上前からある薩摩焼は、伝統的な技術を継承しながら時代背景に合わせた作品を作り続けることで現在も残ってきました。

現代では、白薩摩は観賞用や置物として使われることが多く、黒薩摩は昔と同じ日用品として使われています。お手入れ方法としては、【超絶技巧】と呼ばれる観賞用の薩摩は洗ったりせずに柔らかい布などで埃を払う程度にしましょう。

普段使いの薩摩焼に関しては市販の洗剤で問題なく、傷が付かないように優しく洗うのがおすすめです。

銀座真生堂では明治工芸品を取り扱っております

銀座真生堂では、薩摩焼と同じ時代に作られた明治の工芸品「七宝焼」を取り扱っております。七宝焼は美しい模様や色彩が表現された、現代の技術では再現できないとされる超絶技巧品です。

銀座真生堂は、唯一の明治期の七宝焼専門店として常時、並河靖之、濤川惣助など名工の作品を保有できています。美術館などでガラス越しにしか見ることが出来なかった並河靖之、濤川惣助の作品を実際にお手に取って鑑賞、ご購入出来る唯一のギャラリーです。

また、銀座真生堂では所有している作品を美術館での展覧会などへ貸出すなど文化活動も行なっております。ご興味のある方は、気軽にお問い合わせください。

まとめ

本記事では、薩摩焼の魅力を本薩摩と京薩摩に分けて解説しました。本薩摩と京薩摩にはそれぞれの魅力があり、今も多くの人に親しまれている工芸品です。

現代でも白薩摩と黒薩摩は購入できるため、興味のある方は手に入れてみましょう。また、明治時代には、薩摩焼以外にも様々な種類の工芸品があります。

以下の記事で明治工芸について詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。本記事があなたのお役に立てることを願っております。

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銀座真生堂
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メディア編集部
七宝焼・浮世絵をメインに古美術品から現代アートまで取り扱っております。 どんな作品でも取り扱うのではなく私の目で厳選した美しく、質の高い美術品のみを展示販売しております。 このメディアで、美術品の深みや知識を発信していきます。
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